(平成23年03月17日)
中心 が ない

最後の責任は国家のトップにある。この未曾有の危機を乗り越える方策を、人に丸投げして責任転嫁しようと考えているようでは情けない。

  中国の格言に「一国は一人を以って興り、一人を以って亡ぶ」という言葉がある。物事を本当に成就しようとするならば、トップ自らが命がけでやろうという覚悟がなければ始まらない。リーダーの命がけの覚悟なくして人は誰も動かない。当然、国民の信頼も得られず、むしろ国民に不安感を増幅させパニックを起こす引き金になるだけである。
  トップの仕事は全体を俯瞰し、どこにどのような問題があるのかを明らかにし、先を読み、ビジョンを示し、あらゆる組織が自ら自主的に行動できるように環境を整えることにある。

  今までずっと、日本にはリーダーが不在であると言われ続けてきた。日本中、どこを探しても「中心がない」(本当のリーダーが存在しない)ということは、これを逆説的にとらえてみれば、我々「一人一人が中心」であるとも言える。
  話が脱線するが、今までの絵画の常識として「主役と脇役」「中心と非中心」があり、これをしっかりと捉えて絵を描けと私自身も先生から教えられてきた。絵を鑑賞する人の視線は、最初に主役である中心に注がれ、それから徐々に脇役に異動していくようにすると、絵に物語が生まれるのだと言われた。
  しかし中心がない絵画もある。それはどこか懐かしいようなほのぼのとした雰囲気を持った絵画である。これからの時代はどこかに中心を求め、また中心に依存するのではなく、一人一人が中心になろうとする生き方が求められてくるだろう。そのためにも、今までのように組織に依存し過ぎたり、人任せにすることなく、「自立」した生き方ができるように、自己研鑽を積んでいく必要がある。自立のための第一歩は、呼吸と同じように、まず「吐く」ことである。ものや、お金といった布施でもよいし、愛語でもよい。できることをできる人に誠を尽くしてやってみることである。そして、「吸う」時には、支えられていることに対し「感謝」し、「小欲知足」(腹八分目)を心がけて生きていければ良い。

  今回の震災によって、厳しい避難生活を送られている人たちが素晴らしい生きかたを示されていることは、我々だけでなく、海外の多くの人たちの心にもしっかりと伝わっている。今までは、ものやお金のことだけで頭が一杯になっていて、本来人間にとって大切な思いやりの心、慈悲の心をどこかに置き忘れてきてしまった。しかし、今回の大震災でそのことに気がついた人たちが沢山いた。大事なのは「心」である。

一人一人の心を明るく元気にエネルギーに満ちたものにするためにも、大きく「深呼吸」をしてみよう。きっと何かが変わる。近いうちに必ず、今よりももっと人間らしい豊かな国が誕生することを強く強く願い期待している。

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